大会期間中に全くサッカーの話ができなかったのは、我ながら不覚でした。まだ、大会が終了してから3,4日しか経っていないはずなのですが、その後、いろいろなニュースがあったので、もう、ずいぶん前のような感じがします。
まず、日本代表について。
大会前の練習試合の様子を見て、そうはなってほしくはないのだけど、結局、予選リーグ3戦全敗で、あえなく終わってしまうのではないかなあ、と、心配していたクチですので、岡田監督には、お見それしました、と、謝らなければなりません。
前回のドイツのW杯は、日本サッカーが、Jリーグ発足以降に味わった久しぶりの大きな挫折だったのではないかと思います。それまで、プロリーグを作り、W杯に初出場し、共催とはいえ自国開催して、決勝トーナメントに出場して、と右肩上がりで、今度は国外での大会でも世界を相手に戦えることを示すべきときで、オリンピックから順調に育ってきた「黄金世代」と呼ばれるメンバーを擁し、日本のサッカー界が崇め奉っていたジーコを監督に迎えて、と、万全の体制で臨んだはずなのに、何かが足りなかったのか、歯車が狂ったのか、で、いいところなく終わってしまった、という感じだったと思います。
それで、再出発、となり、新監督がオシム氏だ、ということになったとき、私は、実は非常に期待をしたのでした。彼のサッカーに対する考え方みたいなものが日本に残るとしたら、もし、4年後に早急に結果が出なかったとしても、長い時間の中で、日本サッカーにとってプラスになるのではないか、とすら思えたのです。いや、オシムさんが大学で数学を専攻していたから、過大評価しているわけではないのですけど(笑)。
それが、オシム氏が病で倒れて、岡田監督になったとき、うーん、ちょっと困ったなあ、と、思ってしまったのですね。実は、岡田監督に対して、真面目で非常に緻密に作戦を組み立て、それは、均衡した力の相手のときには有効に作用する反面、想定外の相手にも律儀にその方針を繰り返してしまい、下手をするとサザエをコブシで叩き続けるようなことをしてしまうところがあるのではないか、と、いう 先入観を抱いていたのでした。もう、かなり前になりましたが、フランスのW杯で、直前にカズを外して臨んだ結果がああなってしまった生硬な姿勢に、そういう印象を持っていたのかもしれません。
でも、長田弘さんの対談集「問う力」(みすず書房)の中での、岡田監督との対談を読んだとき、もしかしたら、そういうことだけではないのかもしれないな、とも思えてきました。ここでの対談の中で語られる、サッカーやスポーツ一般のありよう、人との接し方、自らの持し方などは、とても考えさせられるものが多かったのです。
今回の話題に直接関係ないのですが、その中で印象深かった彼の言葉のいくつかです。
「わたしのチームでは練習場にきて、選手の目が輝いていないと強制有給休暇というのがあって、そういうときは帰ってもらいます。『嫌だなと思ってグランドに入っても絶対にうまくならない。怪我するだけだ』 。内心は怒っているのですけど『怒っていないから帰りなさい』と帰すのです。どんなスポーツでも一緒ですが、自分でわくわくして取り組んでいるときは、巧くもなるし、強くもなると思うのです。
わたしはどこのチームにいっても言います。チーム・フィロソフィというのは、エンジョイだと。Jリーグにくるような選手はみんな子供の頃、お山の大将だったのです。そのときは、『おれにボールを寄越せ、なんでおれに寄越さないんだ』と生意気です。ところが、だんだんレベルが上がり、Jリーグになると、『今、ボールは要らない』、プレッシャーで『ミスするのが嫌だから』と、だんだん守りに入るのです。
だから、選手に言うんです。『腰が引けているのは見たくない。ミスを恐れていたらサッカーはできないんだ』と。『今はプロだからわいわい楽しむということではないけれど、子供の頃と同じようにサッカーを楽しみ、好きだ、そういう気持ちを忘れないでほしい』と言うのです。
下手な戦術でも、フィジカルが弱くても、単に選手の勝ちたいという気持ちが強ければ相手より上回れるものなのです。モチベーションが強ければ、それだけで勝つことがあるのです。『どうしても勝ちたいという気持ちがあれば勝てる』という事実があるからこそ、モチベーションというものを重要視するのかもしれない。手は器用ですからすごく細かいことができますけれども、サッカーは足でやるスポーツですから、ミスが多いのです。だからこそ、モチベーションでカバーする部分が大きいのかもしれないですね。」
「日本の場合、スポーツが芸能スポーツになっているのですよ。スポーツをよりおもしろくなど、メディアは意図的な方向性があります。稲本選手がトルコのチームにいますけど(注:当時)、イギリスのチームにいって試合に出られなかったので、帰ってくるのかという話をしたら、試合に出られなくても二部のチームでもこちらにいたいと言っていたのです。それは、日本では街で稲本だと言われたら、キャーッとファンが寄ってきて写メールとかサインしてくださいとかなるからだと。ヨーロッパでは町を歩いていても、みんな、『ヘイ、稲本』と声はかけてくれたとしても、リスペクトの目で見てくれる、この感覚がすばらしいのだと。
日本でスポーツ、選手などの地位を上げていくには、スポーツ界にも問題は確かにありますが、やはりメディアがスポーツに対して、もう少しステータスをつけていくような扱いをしないとだめでしょうね。だから、わたしはバラエティ番組に出ないのですよ。それでサッカーの知名度はより上がるかもしれないけれど、質の違うものにしてしまう可能性があります。ここは難しいところですね。」
こういうことを言う方だとは、全く思わなかったので、岡田監督をかなり見直したのです。
ワールドカップも近くなり、日本代表は直前の練習試合にことごとく負けてしまい、しかも、フォーメーションも日替わりになるなど試行錯誤が続き、挙句の果ては、冗談めかしてでも、監督自身が自分の進退にまで言及するなど、 どうもよくないニュースが続き、今の代表の調子は、岡田監督の作戦が通用して世界と戦えるという感じではないのかなあ、と、再び不安になったまま、本番を迎えることになったのでした。
ただ、藁にもすがる思いで(笑)期待したのは、通常は、これほどの状況のチームだと、監督批判やチームの内紛などが、あれこれ、まことしやかに報道されるのですが、その割合が、かなり少なく思えたことです。戦術面の変更が続くと、出場できる選手とそうでない選手は替わりますし、用いられなくなった選手が不満を漏らすことになりがちなのですが。監督がやめるかも、と言ったとされるときも、「そんなことを監督に言わせる自分達がふがいない」というような選手の方のコメントが報道されていました。案外、チームワークはよいのかもしれない、と、そのことに一縷の望みをかけて(笑)いたのです。
初戦のカメルーン戦ですが、個人的には、日本代表もぎこちないように見えました。が、相手のカメルーンよりも明らかにモチベーションが高かったように思えます。向こうは、エトオが前線で孤立してしまい、彼の力を持ってしても局面が打開できませんでした。チーム内に不協和音があった、というようなことを何かでちらっと読みました。
初戦の勝利、というのは、1次リーグを勝ち残るための布石としても非常に重要ですが、今回は、それ以上に、自信となった、ということが大切だったように思います。2戦目のオランダ戦は、相手が相手だけに敗れはしましたが、私から見れば、1戦目のカメルーン戦よりも遥かにチーム状態はよかったように思います。そして、3戦目のデンマーク戦の日本代表の戦い方は、素晴らしかったと思います。
決勝トーナメント第1戦の相手のパラグアイは、さすがに南米らしい試合巧者だったのですが、それでも、日本代表はしっかりした意識をもって互角の得点で持ちこたえたと思います。こうなったらPK戦なんて運みたいなものです。もちろん、負けたことを責める気は全くありません。
「日本代表の試合が終わるとみんなわざとらしく『感動をありがとう』なんて、きれいごとで済まそうとする。もっとシビアに結果を分析、検討するべきで、そうでないとこれからの日本サッカーの成長は望めない」というような論評もあって、一面ではその通りかと思うのですが、それでも、私自身は最初に書いたように、もっとお寒い結果で終わるんじゃないか、と、危惧していたくらいだったので、自らの不明を恥じるとともに、これだけの活躍をしてくれたことに安堵の思いでいっぱいで、今回の代表にケチをつける気も起きなくなっています(笑)。
そのほか、嬉しかったのは、今まで、個人的に好きな選手で、もっと長時間出場できればいい働きをするんじゃないかなあ、と、思っていた、長谷部選手、松井選手、大久保選手、阿部選手が大活躍したことでした。
また、今回の代表選手ですが、本田選手、森本選手、長谷部選手、松井選手のように、現在、海外のクラブにいる、もしくは、中村(俊)選手、稲本選手、川口選手、大久保選手など、海外のクラブに在籍経験のある選手が以前より増えてきています。海外のスター選手も、以前のように、憧れの対象、ということではなく、リーグやヨーロッパでのカップ戦などで、同じ平面の上で戦ったことのある、という感覚を持つ選手が増えている、ということもいえるのではないかと思います。日本人の有名選手の動向がテレビで逐一伝えられる、ということではなかったので、あまり実感がなかったのですが、地道に、日本サッカーは成長をしていたのでしょう。
今回の戦いぶりが認められて、選手の方々の評価も高まっているようですし、これからが楽しみになってきました。
と、非常に長くなってしまったので(笑)、他の国の代表については、回を改めてお話したいと思います。