BNLA のシリーズで購入したのはアール・クルーだけではなかったのでした(笑) このアルバムが再発売されているのを見たとき、ジャズを聴き始めた頃に読んだ 「ジャズ・サックス決定盤」といった本の中で、この辺の作品はまずCD化されないだろう、と書いてあったのを思い出し、今、手に入れなければ次はいつになるか、と不安になり、毒食わば皿まで、と(笑)、こちらも衝動買いしてしまったわけです。
ルー・ドナルドソンは、2009 年の東京ジャズで聴いて大好きになりました。 「ブルース・ウォーク」、「アリゲーター・ブーガルー」、「ウィスキー・ドリンキング・ウーマン」などの有名なオリジナルを惜しげもなく演奏し、加えて、「この素晴らしき世界」を朗々と吹ききった後で、サッチモのモノマネをして一節歌う、なんて、お茶目なところも見せる、余裕たっぷりで、それでいて、弛んだ、とか、投げやりな、とか、懐メロで聴衆に媚びた、といったところの全然ない、素晴らしいステージでした。私の座席の近くにジャズにうるさそうなオジサン(いや、私もオジサンなのですけど、私よりももっと年上でした(笑))二人連れがいて、開演の前は、ルー・ドナルドソンってもう 80 歳過ぎてるんだろ? まともにサックス吹けるのかよ、と、半分、馬鹿にしたような会話をしていたのですが、ステージが進むにつれ、エビス顔になり、最後は大喜びでスタンディング・オベーションしていました。
このアルバムでは、ファンキー路線や、ソウル志向が多かった、その頃の作品の中ではちょっと趣向を変えて、といった感じで、スタンダードを中心にストリングスをバックに演奏しています。その中に、スティービー・ワンダーの曲が入っていたりするのが、いかにも 70 年代ですが。 この頃、遅くなってから疲れ果てて帰宅する日が続いているので、深夜、ボリュームを絞り、ストリングスをバックにした艶やかなアルト・サックスの音に聞き入ることが多くなっています。
何と言っても、音色がよいのです。リラックスしているのですが、 ツヤとハリを失っていません。気持ちをこめて歌い上げていて、そこに鮮やかさとある種の切なさがあり、聴いていると、安らかながらも、思わず、胸をしめつけられるような瞬間があります。美しいメロディーをシンプルに吹ききれば、それで全てが語られて、一つの情景が出来上がります。
惜しむらくはアレンジで、たまに、ちょっといじりすぎてるんじゃないかな、とか、ムードミュージックになっているかな、というところがありました。せっかくルーさんが吹くのだから、もっとゆっくり、ゆったりとしてスペースを沢山与えればよかったのに、と思ってしまいます。 ミシェル・ルグラン作の「これからの人生」が入っていたので楽しみにしていたのですが、趣向を凝らしたつもりでリズムに変化をつけたりしてしまったのが、裏目に出てしまったようでもあります。それでも、大抵の場合は、バラードにストリングスがつくと、雰囲気たっぷり、という感じになっています。
バックはおそらく、大半がスタジオ系ミュージシャンなのでしょうが(ジョー・ファレルやポール・ウィンター、グラディ・テイトの名前が見えますが)、ベースがリチャード・デイビスで、ひとりでドスドスと重たい音を響かせているのが、面白いような、アンバランスなような、不思議な感じです(笑)