2010年10月21日木曜日

正念場

今日から総合文化祭ですが、休みというわけにはいきません。16:00 から、大学院のゼミがあります。

とはいうものの、14:00 からクラシックギター部の発表があることを、数学科の部員の方から聞き出したので、ゼミの前に寄ってみました。

小さな教室が会場で、平日の日中ということもあり、私が入る前には数人しか聴衆がいなかったので、これで、私が会場でふんぞり返っていたら(笑)、学生さんにとってはプレッシャーかなあ、と、不安になりながらも、着席しました。

すると、その顔見知りの学生さんが、私のいることに気づいて、挨拶をしにきてくれて、いやあ、緊張します、と、言って、また、準備に去っていきました。いや、これは、私がいたからでなく、コンサートの前だから、ということだと・・・思うのですが(笑)。

でも、まあ、こうやって緊張してコンサートできるのも、学生のうちなので、そのしんどさと楽しさを十分満喫してほしいとは思います。 私のように、一人で細々と続けていても、家でギターを弾いていて、たまに、あれ?なかなかイケてない?と、思うときがあっても、自己満足で終わってしまうのですからね(笑)。

演奏のほうは、皆さん、真面目な感じて、はったりや、奇を衒ったところがないのが、非常に好感がもてました。顔見知りの学生さんも、なかなか上達していて、特に、無理なく通る音が出るようになったのが印象的でした。焦って、難曲、大曲に手を出そうとするのではなく、小品をきちんと完成させようとしているのも、よかったと思います。後は、旋律の歌わせ方やまとめ方、タイム感覚が身につけば、聞き応えのある演奏ができるようになるでしょう。これから、大事なところで、しかも、多分、もっとも成長するところなのだと思います。楽しみです。

研究室に帰ってきて、16:00 からセミナーです。堀田良之先生の「加群十話」をテキストにしていますが、これが名著で、なかなかの難物です。もともと、あまり肩肘はらずに、くだけた調子で、進んだ数学をざっと読みこなして楽しめるように、というシリーズで、その精神を完璧に体現しているので、2,3行の間に、定義と定理と証明の概略が、達意の文章でさりげなく書いてあったりします。ゼミで読むのですから、それを受け流すわけにもいかず、ひとつひとつをチェックして行くわけですが、院生の方が、学部のときは数学系の勉強をしていたわけではないので、そういう本の読み方に慣れていず、苦戦をしているようです。

表現論は、群と環(代数)と線型空間の話を言ったり来たりしなければならず、形式的に記述しようとすると、結構な記号が出てくることになります。少なくとも有限次元の場合は、群を行列で書き下すだけなので、一度身につけば、その辺は自然にわかるのですが、最初、π: G → GL(V) と書かれたとき、π(x) は「線型写像」で、これが更に V のベクトル v を、π(x) v  に移すのだ、というようなことを読んでも、今、何がどこにいるのかわからないみたいです。

積を演算にする群の表現 (π、V) の、部分表現を定義したときに、それが準同型であることを説明して、と、質問してみたら、π (a+b) と書き始めたので、即座に、ニシザワセンセイのストップがかかり、そのまま、開始 30 分で終了になりました(笑)。

その学生さんも、今まで必死に食らいついてきていましたし、学部で数学の講義を受けていないことも考慮して、発表で詰まっても、私の講義を3年間受けてきた学生さん達に対するときのように、じゃあ、自分で考えて、ということを余り言わなかったのですが、逆に、そのせいで、こちらが説明して、ひとつひとつののステップを理解したとしても、今までの話の全体像が得られていないようです。

証明の技巧をチェックするだけで精一杯だったのでしょうが、今、何の証明をしているのかを、きちんと確かめたうえで、ひとつひとつ進んでいかないと、自分のやっていることがわからないままになってしまいます。自分が、現在、何がわかって、何がわかっていないかということは、当の本人以外は誰もわからないので、私の方としては、その学生さんがきっちりと確信を得るまで、待つしかありません。

勉強する姿勢を身につける上で、大事な段階にさしかかっています。