ということで、異分野交流に意欲を燃やすウィントンが、満を持して(?)、再び、ウィリー・ネルソンと組んだこの作品は、レイ・チャールズへのトリビュートで、大半の曲にノラ・ジョーンズも参加する、という大変豪華なライブ・レコーディングです。
ウィリー・ネルソンは、レイ・チャールズと非常に親しい間柄だったそうで、何度もデュエットでレコーディングを行ったとのことです。旧友の愛唱曲を、ソウルとか、カントリーとかという括りとは関係なく、独特の味わいで歌い上げています。
ゲストのノラ・ジョーンズも、実に幅広いバックグラウンドを持っていて、ウィリー・ネルソンとも、生前のレイ・チャールズとも以前に共演したことがあるうえ、現在、ウィントン・マルサリスと同じ、ブルーノート・レーベルに所属しているという、これ以上ないくらいにこの企画にうってつけのキャラクターで、二人の間に入っても、力んだり、気圧されたりすることもなく、自然体ながらも存在感を示し、他の男くさい(笑)演奏者のなかに、彩りと柔らかさとを添えています。
ホスト役のウィントンも、不必要にしゃしゃりでず、共演者全体のバランスを上手くとりながらも、自分のスペースでは、さすが、というところを見せています。バックはウィントンのレギュラー・グループにウィリー・ネルソンゆかりのハーモニカ奏者という編成ですが、こちらもクオリティーの高い演奏で、アレンジもしっかりしています。
ただ、ウィントンと彼のレギュラーメンバーが整然としすぎて、純粋培養な感じで、ソウル・ミュージックのルーズなかっこよさみたいなものが伝わってこなかったのが玉に瑕で、「黒人の伝統文化の継承がどうこう」というように、格式ばった使命感がついてしまったのかなあ、と、思わないでもありません。村上春樹さんが、「意味がなければスィングはない」のウィントン・マルサリスの章で、
「こんなことを言うとウィントンは激怒するかもしれないけれど、彼の音楽は時として、一昔前のウェスト・コースト・ジャズのサウンドを僕に思い起こさせる。」
と、書いていたことを思い出して、ちょっと、苦笑してしまいました。
ボーナス・トラック(これがあるから、かなり安い輸入盤ではなく、日本盤を買ってしまったのですが(笑))は、ノラ・ジョーンズがウィントンのグループをバックにソロで歌っていて、これがいい感じです。この編成で、オーソドックスなジャズのアルバムを一枚作ってほしいような気もします。