2012年10月28日日曜日

金木 (1)

弘前に住むようになって6年半が経ったのですが、青森県内で行ったことがあるのが、青森、大鰐、浅虫くらいで、しかも、どれもゆっくり散策をする、という感じではなく、弘前以外の土地をほとんど知らないままでした。せっかくこちらに住んでいるのだから、少しは周辺の名所を歩いてみようかと言う気になりました。

このブログでは、「旅のひとこま」、「弘前の風景」という文章の仲間分けがあるのですが、「旅」というほど遠くもないし、かと言って、例えば、五所川原のことを「弘前の風景」に分けてしまうと、関係者から猛抗議を受けるのは目に見えているので(笑)、新たに弘前の街を出て津軽近辺をうろうろしたとき用のラベルを作ることにしました。このラベルの文章がこれっきりにならないように気をつけたいと思いますが・・・(笑)


最初に思い立ったのが、太宰治の故郷として有名な金木です。ということで、散策のお供はこの本です(笑) 出かける前に、もう一度眺めなおしてみたのですが、例えば、津軽の人たちの気質や、弘前という街の性質など、肯かされることが多く、随所で、さすがなだあ、と感心させられます。







とはいうものの、 このブログで今まで殆ど登場しなかったことからも察せられるかもしれませんが(青森県民の反発を覚悟して告白すると(笑))、実は、太宰はそれほど好きな作家ではなく、持っている本も、こちらに住むならば読んでおかなければならないかなあ、と、引っ越してきて間もなく購入したこの本だけだったのでした。自称本好きで、たぶん、他の方はあまり関心を持っていらっしゃらないであろう(笑) 、マニアックな小説の話を知ったかぶって延々としているにも関わらず、こと、太宰に関しては、6年経つまで金木に行ってみようとすら思わなかったくらいですので。

さすがに、太宰の文章が物凄いものであることくらいはわかっているつもりですが、あれほど水際だって格好良い文を書く、センスがよくて博識な人が、一方で、無茶をしたり、卑屈になったりすると、読んでいて落ち着かなくなってしまうのです。健康なときに書いたものや、種種の仕掛けを工夫した小説は、まだ、本を借りて読んでいた時期に(笑)、結構面白く読んだ記憶があるのですが、そこから一歩踏み込もうとすると、自分が感情移入 している主人公が破滅していく物語などを読むことになってしまい、いてもたってもいられなくなってしまうわけです(笑) こういうのを読んで死にたくなっても困るしなあ、などと、それこそくだらないことまで思ったりもしていたのでした。

そういいながらも我ながらちょっと不思議な気分でもあります。好きな作家は? と聞かれたら、小山清、小沼丹、木山捷平という名前はきっと挙げると思いますし、彼らを知るきっかけになった井伏鱒二も勿論好きな作家なのです。井伏鱒二は太宰が若い頃からその許に出入りしていた作家ですし、そういう意味では、井伏鱒二の弟子だった小沼丹とは、兄弟弟子的な関係といえます。木山捷平もよく井伏鱒二を訪れていて太宰とは顔見知りで、若いときは同じ同人雑誌に参加した仲です。小山清にいたっては、太宰の弟子であり、作品を見てもらったり、太宰が金木に疎開していたときに三鷹の家の留守番をしていたりした人だったのでした。つまり、好きな作家の一群の人間関係のなかで、太宰のところだけぽっかり穴が開いているのです。前述の方々は、それぞれの視点からの太宰の思い出を書いているので、実は、本人の文章は読んでいなくても、人柄とかエピソードは、かなり馴染んでいるような気がして、今回、改めて太宰の本を「津軽」一冊しか持っていないことに気づいたときも、あれ? そんなものだっけ、というような気になったのも事実です。

・・・と、小説の話ばかりをしていて、ちっとも出発してませんでした(笑)  まずは、弘前から出かけなければなりません。

弘前から金木に行くには、まず、五能線に乗って五所川原に出、そこから津軽鉄道という私鉄に乗り換えることになります。

五能線に乗るのも今回が初めてです。弘前からふたつめの川部という駅でスイッチバックし、リンゴ畑の茂みをくぐりぬけ、車窓に枝がかぶさるのではないかというようにしばらく走ると、ひろびろとした景色が開け、津軽平野に出ます。弘前を出た頃には西側にあった岩木山が、徐々に南に見えるようになります。



この付近の方に笑われるか憤慨されるかするかもしれないのですが、板柳とか、五所川原とか、木造とか、鶴田とか、沿線の町の名前はよく聞くのですが、その位置関係をほとんど把握していませんでした。列車に乗りながら、ああ、そうだったのか、と、6年半目にして、初めてわかったことが多かったです(笑)

弘前から各駅停車で 40 - 50 分ほどで五所川原に着きます。降車し、高架を渡って津軽鉄道の発着のホームに行ってみると、係員らしき方に挨拶されたのですが、まだ、乗客らしき方がいません。ホームにある待合室と思しき建物に入ってみると、薄暗い中に椅子が並んでいて、座布団も置いてあるので、発車までの 15 分ほどはここで過ごせばよいのかなあ、と腰を下ろしてみたのですが、私に引き続いて、もう一人、観光客らしき方がやってきて、所在なげにホームに立っている他、誰も来ません。トイレに立ったときに、車掌さんらしき方に呼び止められて切符を買ったのですが、そのときも依然として待っているのは2名で、この後に接続の列車もないみたいだし、これはいよいよ乗客2名とかそんな破目になるのかしらん、と、不安になってきた発車5分ほど前に、乗客の方がぞろぞろとやってきました。後でわかったのですが、列車がワンマンカーなので駅改札の出入りは自由で、 JRと一緒の駅舎の中にある待合室のほうがきれいなので、そちらで待っているのが普通のようです。

津軽鉄道は、ストーブ列車など、いろいろと工夫を凝らした運行をしています。 現在は、あいにく、鈴虫列車とストーブ列車の端境期で(笑)、ごく普通の運行です。列車には、津軽半島観光アテンダントさんが乗車していて、駅到着のアナウンスと共に沿線の案内をしたり、客席を廻って、沿線にお住まいの方とは挨拶や世間話をし、観光客と思しき方には訪れる場所の情報を紹介してくれたり、と一人ひとりに声をかけてくれます。 私の場合、この辺にお住まいですか? ご観光ですか? と聞かれたとき、どちらか微妙だなあ、と思わなくもなかったのですが(笑)、 まあ、こちらに来るのは初めてだし、と、観光客ということにすると、金木の地図や沿線のパンフレットを持ってきてくださり、何時間ぐらいで巡る予定ですか? と聞かれて、3時間くらい、と応えると、それならじっくり時間をかけてみることができますね、今日は岩木山のてっぺんが白くなって寒くなってますから暖かくしておいでください、とか、金木駅にロッカーもありますから荷物は預けられますよ、とか、いろいろと教えてくれました。

そうこうしているうち、五所川原から 20 分ほどで金木に到着しました。

長くなったので、続きは次ページにします。タイトルに反して、金木に着く前に終わってしまいますが・・・(笑)