私が崇め奉るギタリストである、ラルフ・タウナー様がメンバーであるグループ、オレゴンの待望の新アルバムです。
ここ数年、イタリアの CAM レーベルから、2、3年に1回くらいの割合で新録音が発表されていて、今回もきちんとしたペースで着実に豊穣な音楽ができあがった、という感じです。何と言っても、グループ結成以来、 42 年間(!!)、メンバー4人のうち3人が変わらず、唯一、途中参加の マーク・ウォーカー (ds, perc) ももう 15 年近く在籍しているという鉄壁のチームワークで、複雑で精妙な旋律をナイロン弦のギターとオーボエでユニゾンするなどというときでも、力むことなく一糸乱れぬアンサンブルをみせています。 それでいてマンネリや緩んだところは微塵も感じさせず、いつもながらの清澄で美しい旋律と、格調高くも緊張感あふれる即興演奏で、さすが、というところを聴かせてくれています。
オリジナル・メンバーでそのシタールとタブラが鮮烈な印象を残したコリン・ウォルコットが不幸な事故死を遂げてしまった後、トリロク・グルトゥ(perc) でさえもいまいち安定しないままで(とはいいつつ個人的にはトリロク・グルトゥ在籍時のアルバムも結構好きなのですが)、彼が脱退してパーカッションなしのトリオの活動を経た後に、ドラムを主に演奏する、しかもジャズやラテンがメインのスタイルであるマーク・ウォーカーの加入、というのは、その当時は、グループとしては結構大きな決断だったかもしれません。しかし、結論としては、インド風のパーカッション奏者を加えて形式だけそれまでと同じ状態を続けるようなことをするより、よい方向に働いたのではないかと思います。
結成当初、傑出した打楽器奏者であったコリン・ウォルコットのエスニックな部分と、ギターとピアノのラルフ・タウナーのクラシックやビル・エバンスをバックグラウンドにする音楽のコントラストが魅力だったのが、コリンの死後は、作曲にしろ、演奏にしろ、ラルフ・タウナーひとりの個性が際立ってしまいがちで、グループの音楽の幅を広げるのが難しかったのかもしれません。それでも、二人の影に隠れて目立たなかった(?)ポール・マッキャンドレス (reeds) やグレン・ムーア (b) も存在感を増し、早い段階から導入していたシンセサイザーをアコースティックなサウンドの中にうまく馴染ませることで音色のバリエーションも広がり、その上で、マーク・ウォーカーの参加で、それまでとは違った軽やかなリズムと若さ(もう彼も 50 歳を超えているので、70 歳前後の他のメンバーと比べて、という話ですが(笑))が加わり、メインストリーム・ジャズやラテンのテイストを取り入れたようなリズミックでメロディアスな演奏もすっかり板について、新たな魅力も定着したように思います。
単なるジャズでも、エスニックでも、フュージョンでも、ヒーリングミュージックでもない、彼らだけの音楽で、こういうのを聴いてしまうと、この頃、ロック、エレクトロニカ、アンビエントなどを浮気して聴いていたのをつい忘れて、やっぱり、これだけあればいいか、という気にさえなってきます。