2011年3月4日金曜日

加古 隆 「いにしえの響き ~ パウル・クレーの絵のように ~ 」

パウル・クレーの12の絵にインスパイアされた12 曲からなる、1986 年録音のピアノ・ソロのアルバムです。

ずっと前から聴いてみるか迷っていました。評判が高いのは十分知っていたのですが、私が、パウル・クレーの絵をとても好きなので、そのイメージから少しでも逸れてしまうと、なあんだ、こんなの、違うよ、と、思ってしまいそうだったからです。

それが、この前、秋葉原で閉店セールでCD3割引に出会ったときに、このアルバムを見つけ、せっかくだから、と、いう気分になったのでした。

一聴して、もっと早くから手に入れなかったのを後悔しました(笑)。

冷静に研ぎ澄まされた、清澄さと緊張感をはらんだ響きは、パウル・クレーの絵の、心の奥底の秘めやかな場所で、幽かに、原初の色や形が胎動しはじめるような朧げな無垢と不安と、見事なまでに重なっています。何も知らされずにこの音を聴いて、どの画家を思い浮かべる? と言われたとしても、間違いなく、クレー、と答えるだろうなあ、と思えるほど、絵の前に立っているような気分にさせられます。

もちろん、安易にイメージをなぞったということを意味しているのではありません。これらの音楽のひとつひとつの信じられないほどの達成は、奏者でなければなされないものです。